『攻殻機動隊』SACシリーズ第2話「暴走の証明」をネタバレ考察してみました。
本作「暴走の証明」は、草薙素子の複雑な想いが画面から滲み出る泣ける作品です。
犯人に対する止むに止まれぬ共感と人としての正義感の交錯した2つの想いから、素子自身が暴走してしまいます。
いつもクールでしたたかな(それでいてユーモアも忘れない)チャーミングな素子ですが、本作では少し様子が違うようです。
プリップリの素子もチラ見できる素子ファン必見の作品ですよ♪
あらすじ
本作「暴走の証明」の見どころ考察に入る前に、ざっとあらすじを押さえておきます。
詳しくお話しするのは公開ブログでは出来ませんので、お好みの動画配信サービスで予習しておいてくださいね♪
剣菱重工の開発ドームで、多脚戦車の一機が突如暴走を始め、内務省から発注元である陸自に代わって9課に阻止するよう出動要請が出ます。
素子は戦車が市街地に進入する前に迎撃する作戦に立てますが、名手サイトーの射撃も逆探知されて、ついに市街地に進入を許してしまいます。
一方、トグサによる担当エンジニアへの聞き取りから、戦車を操っているのは、事件の1週間前に死亡していた「カゴタケシの脳核」であることが判明。
ー戦車の行き先は彼の両親が暮らす実家かも?
この予測が的中します。
暴走戦車は実家にたどり着き、避難せずに残っていた両親に近づこうと触手を伸ばしかけた寸前、素子の電脳攻撃により、戦車は動きを止めました。
エンジニアの命はついに終わりを遂げたのでした。
以上が本作のポイントとなるストーリーです。
ネタバレ考察
【考察1】素子が体を張ってまで暴走を食い止めるようとした本当の理由とは?
素子がゲリラ戦よろしく、危険を冒してまで暴走する多脚戦車に飛び乗り、エンジニアの脳核を搭載したハッチをこじ開けようとした理由は一体何だったのでしょうか?
答えは、共感と正義感という交錯した想いです。
多脚戦車を設計したエンジニア「カゴ タケシ」は、義体化せずには20歳までは生きられないと医師に宣告された極度の病弱体質でした。
「病弱な体に自分を産んだ両親への恨みを晴らすため、自分の開発した戦車に乗り、両親が暮らす実家に向かっている」というトグサの報告に、素子の心は揺れました。
それは次のような想いが心の奥底で湧き上がったからです。
義体化するしか生きられないのは私とて同じ
だ・け・ど...
「生」を授けてくれた両親への復讐は許されるものではない
この共感と正義感という2つの想いが交差した素子は、いつもの冷静さを振り捨て、バトーの制止も聞かず、暴走する多脚戦車の後を追って駆け出したのでした。
【考察2】戦車の暴走事故であるにもかかわらず陸自が出動しなかった理由とは?
戦車の暴走事故に対して、管轄である陸自が出動しない理由は、暴走した多脚戦車が実は陸自が正式に発注を検討していたからです。
正式採用を検討中だった陸自にしてみれば、ハードおよびソフトの欠陥問題が、陸自の責任問題や批判になることを恐れたのです。
明確に「テロ」扱いにならない限り、自分たちには関係ねぇーとして「管轄外」を決め込んだわけです。
正義感が人一倍強いトグサが腹を立てるのも無理はありませんね。
見どころ
本作「暴走の証明」の見どころを独断と趣味(?)でまとめました。
美しい「新浜」の自然景観
本作「暴走の証明」では、攻殻機動隊シリーズ唯一と言っていいほどの美しい自然の風景が数多く登場します。
おもに都市部もしくは港湾周辺を舞台にしている攻殻の各話のなかで、この美しさはハッと息を呑むほど新鮮です。
次のようなシーンは、ぜひ視聴の際にチェックしてみてください。([分:秒]内はおおよその場所)
暴走する多脚戦車に備えて、先回りした県警部隊に、9課の軍用機が垂直プロペラを吹かして静かに着陸するシーンです。
サイトーが暴走戦車に向けて迎撃スポットから打ち込んだ対戦車ミサイルが、田園の緑を切り裂くように飛翔する場面は
本作「暴走の証明」のメインテーマ「望郷」にふさわしい景観設定には脱帽です。
素子のキュートなお尻どアップ
暴走する多脚戦車に飛び乗ろうとして搭乗していたタチコマから降りようとする際、なぜか絵コンテは少佐の真後ろからお尻どアップの数秒間を描きます[19:15]。
まぁーたまたまだったのでしょうか(笑)
観る者の「視覚誘導」(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 2nd GIG』、荒巻)を狙った?
まぁーどーでも良いのですが、このお尻どアップ映像はもシリーズ中、この第2話「暴走の証明」だけでしか見るこはできません。
お見逃しなきよう視聴頂ければ幸いです。
菅野サウンドトラック
本作「暴走の証明」において聴くことができる菅野よう子プロデュースのサウンドトラックをご紹介します。
草薙少佐の美しすぎる作戦説明シーン [04:28]
surf
少佐による事件と今回の作戦行動の説明シーンに流れる一曲。
日本の古楽器「尺八」のような渋い音色と、洋楽器フルートがファンキーなメロディーが絡み合う名曲。
「攻殻機動隊SAC」シリーズを代表する定番サウンドトラックです。
少佐は状況を踏まえて、9課のメンバーを二班に分け、適材適所の役割をあたえる見事な采配に脱帽です。
俺の鋼の身体を見せてやる[07:55]
home stay
暴走戦車が美しい田園風景をバックに静かに姿を表すシーンでの一曲。
ファンキーなエレベとカッティングギターだけで静かな緊張感を演出する前半部。
スリリングな転調は、ストリングとバイオリンで。
最後は、ハードロック調のエレキ・ソロで締めくくるハイレベルな3部構成です。
名手サイトーの狙撃をかわすなんて![10:27]
home stay
サイトーによる迎撃ポイントからの狙撃シーンでの一曲。
緊張感あふれる狙撃シーンを、スリリングな旋律が盛り立てます。
この曲は「攻殻機動隊SAC」シリーズではスピード感・緊張感を演出する定番サウンドトラック。
楽曲後半部分のハードなエレキ・ソロパートがサイトーに合ってます♪
涙腺崩壊・主人公の苦渋の半生[16:03]
beauty is within us
トグサの切々としたトークシーンから、素子らによる暴走戦車との戦闘シーン終結まで、3分間もの長丁場を飾る一曲。
本作におけるメインのサウンドトラックと言ってもいいでしょう。
男性ソロによる切ないバラードですが、単体でも十分に聴き応えがあるしっかりとした曲作りになっています。
事件の真相となる「カゴ タケシ」の半生を説明するトグサの言葉を感動的に演出します。
素子の暴走!これが9課の底力だ![19:26]
スタミナ・ローズ
少佐がタチコマを飛び降り、暴走戦車相手にゲリラ戦法開始!と同時にスタートする、戦いの舞踏曲とも言える一曲。
重低音のバスドラム音が、ドス!ドス!ドス!
想定外の和音進行にのせた多重コーラスが狼煙のように響き渡る!
聴く者を一瞬で攻殻ワールドに誘います。
攻殻機動隊用語集
本作で登場する『攻殻機動隊』シリーズをディープに理解するために欠かせない専門用語をまとめました。
あなたはいくつ知っていますか?
ニューロチップは、AI(人工知能)特有の機械学習や推論処理を高速かつ低電力で実行するためのチップ(電子回路の最小単位)のことです。
チップには、脳神経の回路(ニューラルネットワーク)をモデルにして作られた回路が焼き付けられています。
タチコマのニューロチップは、今回の事件の舞台である「播磨研究学園都市」で作られました。
「新居浜」(にいはま)は、『攻殻機動隊SAC』の舞台となる兵庫県の沖合を想定した海上都市の県名です。
「新浜」(にいはま)は、新居浜と本州との間に広がる内海沿岸部。
ちなみに、本作「暴走の証明」において、暴走戦車が走行した新浜と本州をつなぐ大橋が、「新浜大橋」です。
攻殻機動隊と言えば「攻性防壁」、「攻性防壁」と言えば、攻殻機動隊。まさに「光学迷彩」とならぶ「攻殻機動隊」の超重要キーワードが「攻性防壁」です。
ネットワークに常時接続された電脳(自律システム)が、外部から不正にアクセスしようとするユーザに対して攻撃的な挙動をするため、このように呼ばれています。
軍や政府関係のネットワークでしか使用を許可されていない特殊なインターフェースです。
暴走した戦車は陸自が正式採用を予定していた第一級の軍事車両である暴走戦車は、トップレベルの攻性防壁を実装されていました。
第2話『暴走の証明』【ネタバレ考察】まとめ
「暴走の証明」は、草薙素子の複雑な想いが画面から滲み出るような泣ける作品であります。
犯人に対する止むに止まれぬ共感と、人としての正義感の交錯した2つの想いから、素子自身が暴走する。
ー完全義体化サイボーグ。
そして人間「草薙素子」。
攻殻SACシリーズ全26話の中でも、素子の息づかいが聞こえて来そうなレア作品です。
そして、プリップリの素子もチラ見できる稀有な作品でもあります。